2024年3月より、19世紀から20世紀初めに描かれたノルウェー、スウェーデン、フィンランドの絵画を紹介する展覧会が開催されています。
スウェーデンの絵画は国立美術館に所蔵されているもので、現地で見た可能性もあります。しかし、当時はフランス由来のマリーアントワネットの絵画に注目してしまい、北欧ならではの自然やサーガ(所謂おとぎ話)に関する絵は素通りした可能性が高いのです。それでは勿体無いと、今回改めて北欧の神秘に触れるべく訪問してきました。
「北欧の神秘」展
会期
2024年3月23日(土)〜6月9日(日)
場所
SOMPO美術館
※ゴッホの「ひまわり」の展示で有名です
見どころ
序章 神秘の源泉ー北欧美術の形成
19世紀後半、北欧の自然や文化を独自に表現し始めた芸術家たちの作品を紹介しており、展覧会の冒頭で、北欧ならではの自然を印象付けてくれます。
北欧の厳しい自然を表現しているので全体的に暗めな雰囲気ですが、時々描かれる人物が赤い三角帽子を身につけているのを見ると微笑ましい気持ちになります。
1章 自然の力
19世紀後半から20世紀初頭を中心の作品を紹介しています。
こちらは撮影可能エリアなので、写真を撮っている人も多くいました。
メインの展示の1つは、エドヴァルド・ムンク「フィヨルドの冬」。
ムンクは、元々自然を描いていましたが、後に人物を表現するようになったそうです。ムンクの人物といえば、かの有名な「叫び」ですね。
個人的にはブルーノ・リリエフォッシュが気になりました。
スウェーデンのウプサラ出身で、展覧会では「ワシミミズク」や「春の夜」「密猟者」の作品が展示されています。「動物画家」として紹介されていました。動物画家という表現がフランスやイタリアなどのメジャーな美術展では聞かない表現なので印象に残りました。
自然豊かな北欧美術の一端を感じることができます。
オーロラや白夜を題材とした作品も多く展示されていました。
2章 魔力の宿る森ー北欧美術における英雄と妖精
北欧の民話やおとぎ話(サーガ)、北欧神話、フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」の物語を舞台とする作品が展示される、所謂「剣と魔法の世界」です
ガーラル・ムンテの描く「山の門の前に立つオームスン」など一連の作品はさながらRPGの世界を感じられます。
アイルランドの王の命により、トロルの巣に囚われた姫を助け出すため、オースムンは兄弟二人と共に船で向かう。
「北欧の神秘」鑑賞ガイド『名誉を得し者オースムン』より
ひとりで山の城へ乗り込み、トロルを倒して姫を救出したオースムンだが、船に残った兄弟の姿はすでになかった。
姫を助けて城に乗り込む展開はファンタジーアドベンチャーの要素満点。
同じく、ムンテ先生の「スレイプニルにまたがるオーディンのタピスリー」は、一見、黒い馬に騎士が跨っているだけに見えてしまいますが、右上の”ODEN”(オーディーン)に気づくと北欧神話の世界観を掻き立てられます。
こちらのエリアは、パンフレットにあるテオドール・キッテルセンの「トロルのシラミ取りをする姫」など、他にも北欧神話を舞台にした作品があり撮影も可能です。訪問時は一番賑わっていたエリアでした。
3章 都市ー現実世界を描く
ここで、ファンタジー世界から一気に現実に引き戻されます。
都市生活が主題となるこのエリアでは、都市開発の光と闇を表す作品を見ることができます。
スウェーデン関係で言えば、19世紀後半の作品が多く、ストックホルム周辺を描いたものは現在の様子と重なる部分もあります。アルフレッド・バリストゥルム「ストックホルムの水辺の冬景色」は、馬の存在は異なるものの建物の雰囲気は現代に通じると思いました。
また、ムンクの「ベランダにて」も展示されており、出口付近では美術館の収蔵品で有名なフィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」を鑑賞できます。
まとめ
北欧の自然や神話、おとぎ話を主題にした作品は、西洋美術のメジャーな宗教画とは異なる趣があります。特にファンタジー要素あふれる「英雄と妖精」をモチーフにした作品は、RPGの冒険に親しんだ人にはグッとくるものがあるはず。
今回の展覧会は日本で初めて北欧の絵画にフォーカスした本格的なものなので、北欧の神秘の世界観に触れたい人にぜひおすすめです。