2020年10月、ノーベル賞の受賞者の発表が行われました。
2020年のノーベル賞の授賞式や晩餐会はCOVID-19の感染拡大により残念ながら中止となってしまいましたが・・
一方、賞金は昨年の900万スウェーデンクローナ(SEK)から1,000万クローナにアップ!ちょっとだけ景気の良いニュースもあった今年のノーベル賞です。
物理学賞(Physics)
“Black holes and the Milky Way’s darkest secret”
(ブラックホールの研究)
Roger Penrose (Prize share・・1/2)
Reinhard Genzel (Prize share・・1/4)
Andrea Ghez (Prize share・・1/4)
イギリス・ドイツ・アメリカのあわせて3人の研究者が選ばれました。宇宙空間でブラックホールが形づくられることを理論的に証明したそうです。
Roger Penrose氏は、20世紀最大の物理学者と言われたアインシュタインの一般相対性理論によってブラックホールの形成を証明しました。
Reinhard Genzel氏とAndrea Ghez氏は、宇宙の観測技術を発達させ、銀河の中心部にあると見られていた、太陽のおよそ400万倍の質量の超巨大ブラックホールの存在を明らかにしたことが評価されました。
1,000万クローナの賞金のうち、半分はRoger Penrose氏に、残り半分をReinhard Genzel氏 と Andrea Ghez氏の2名で分け合う形となっています。
化学賞(Chemistry)
“Genetic scissors: a tool for rewriting the code of life”
(ゲノム編集技術の開発)
Emmanuelle Charpentier(Prize share・・1/2)
Jennifer A. Doudna (Prize share・・1/2)
2人は「細菌」の免疫の仕組みを利用して、ゲノムと呼ばれる生物の遺伝情報の、狙った部分を極めて正確に切断したり、切断したところに別の遺伝情報を組み入れたりすることができる、「CRISPR-Cas9」(クリスパー・キャスナイン)という「ゲノム編集」の画期的な手法を開発したことが評価されました。
この手法により、ゲノム編集を簡単に効率よく行えるそうですが、倫理的にはどうなんだろう・・?と疑問がつきまといます。
生理学・医学賞(Physiology or Medicine)
“Hepatitis – a global threat to human health”
(C型肝炎ウィルスの発見)
Harvey J. Alter
Michael Houghton
Charles M. Rice
3人の研究は、C型肝炎ウイルスの発見によって多くの慢性肝炎の原因を明らかにし、輸血などの際の検査ができるようにしたほか、多くの人の命を救う治療薬の開発に道をひらいたことが評価されました。
C型肝炎ウィルスが発見される前は、AでもBでもない謎の肝炎扱いだったので、画期的な発見でした。
プレスリリースにはPrize share について言及されていなかったのですが、joint受賞なので恐らく3等分だと思われます。
文学賞(Literature)
アメリカの詩人 Louise Glück
for her unmistakable poetic voice that with austere beauty makes individual existence universal
引用元:The Nobel Prize press release https://www.nobelprize.org/prizes/literature/2020/press-release/
“厳粛な美を伴う、まぎれもなく詩的な声で、個の存在を普遍的なものにした”
“ルイーズ グリック”で検索してみると、作品についての論文などが出てくるので、そこで作品を見ることができます。「野生のアイリス」は、土に埋められた球根について詠んだ詩ですが、人の存在というか、在り方を連想させるようにも感じられました。
こういった作風が選ばれることを考えると、日本の某世界的小説家は難しいのではないか・・と思ってしまうのは気のせいでしょうか?
イタリア人から「ノルウェイの森」のどこがいいのか教えてくれと頼まれて、私は答えられませんでした。。。
平和賞(Peace)
World Food Programme (WFP)
WFP(世界食糧計画)は、アフリカや中東など各地の紛争地で、危険で困難な状況にいる人々に食料を届け、支援活動を続けてきました。
平和賞は、個人的にかなり難しい賞だと思っています。
“平和”に対する貢献は時代とともに評価が変わっていくこともあるので・・
2019年のエチオピア紛争の平和的解決に尽力したエチオピアのアビー首相は、あの時点では停戦合意など一定の評価があったと思います。しかし、受賞の約1年後に紛争が激化してしまったため、ノーベル賞委員会が全ての当事者に暴力の停止と紛争の平和的解決を求める声明を公表する異例の事態となってしまいました。
平和賞の評価は本当に難しいと思います。
経済学賞(Economic Sciences)
“The quest for the perfect auction”
Paul R. Milgrom (Prize share・・1/2)
Robert B. Wilson (Proze share・・1/2)
電波の周波数の割り当てなど、従来の方法では売ることが難しかったモノやサービスに使われる新たなオークションの制度設計を行い、世界中の納税者などの利益につながった点が評価されました。
・・・って、これだけ書いてもオークション理論は正直よく分かりません。ヤフオクが精一杯の凡人が理解するのは難しそうですが、入門書で触りだけでも理解できれば・・と思っています。
まとめ
2020年のノーベル賞について簡単にまとめてみました。
新型コロナウィルスの影響で、授賞式がリモートだったり晩餐会がなかったりと、withコロナのNobel Prize2020となりました。
何年後か「そんなこともあったね」と言えるように、事態が落ち着くのを祈るばかりです。